以前の記事でECUチューニングをしたメルセデスベンツAMG C63S。(埼玉県川口市)ATF圧送交換もご依頼いただいてました。その時の作業事例です。

「オートマのオイルを交換してたけど圧送交換まではしていないので、今回は圧送交換とSOD-1の添加、アダプション(キャリブレーション)などお願いできるならやってもらいたいです」

とのこと。
現在の走行距離は14000キロ。って少なすぎ。それでATF交換をしていたとは!素晴らしい! 低走行ですが頻繁にATF交換をされるのはミッションにとってはイイ事です。だって500馬力・700Nmの強大なパワーを常に受け止めているのですからね。
今回の作業では変速シフト時のキャリブレーション(アダプション)まで行います。
なにやら難しい用語が出てきましたが、キャリブレーションを簡単に言えば「調整」とか「校正」という意味合いになります。せっかくオイルを全量交換するのでついでにシフトフィーリングも向上させましょう!って事です。
リフトアップをして下回りの覗いてみますが、新車のようなコンディション。
ドレンボルト外してオイルを排出。
オーバーフローパイプが内部に設置してあるためドレンボルト外しただけでは完全には抜き取ることができません。専用工具を使用してオーバーフローパイプを打ち抜きます。
内部に打ち抜くことで、さらに排出ができます。
オイルパンの取り外し完了。四角い箱のような物がストレーナーです。
取付ボルトを外して慎重にバルブボディを下ろします。
TCM製造元はコンチネンタル。番号は4-4。僕が見てきた限りでは一番新しい物で最新版ではないかと思います。当初はシーメンス製だったと思いますが年次改良で色々変更され熟成された7Gトロニックプラス。
これが悪評高い7Gトロニックのスピードセンサーです、

このセンサーが故障すると、

  • ギアが固定になり変速できない
  • 変速できない、しない
  • リバース(Rレンジ)に入れてもバックできない
などの症状が発生します。

そしてDTCコードとしては、
・P0715 Y3/8n1
・P0716 Y3/8n1
・P0717 Y3/8n1
・P0718 Y3/8n1
・P0720 Y3/8n2
・P0721 Y3/8n2
・P0722 Y3/8n2
・P0723 Y3/8n2
・ソレノイドバルブY3/9Y1 Y3/9Y2 Y3/9Y3 Y3/9Y4

が検出されます。
やや定番となりつつある7Gトロニックのスピードセンサー故障。セキュリティ関連の部品に該当して入手するのが難しいエレクトリックプレートですが、オートプラネットでは、このようなトラブル修理も可能ですのでご連絡ください、業者様でも大丈夫です。
あまり見かけないパーツ。こちらはAMG・ウェットクラッチ車専用パーツです。
少し話が脱線しましたが、8個のソレノイドバルブを外していきます。
ソレノイドバルブのストレーナーメッシュ部分には異物が確認できます。詰まるほどではないけれど、少なからず性能に影響があることは確かです。
パーツクリーナーで洗浄すればこの通り!異物や不純物はすべて取り除きました。
洗浄が終わったソレノイドバルブ。
続いてバルブボディ本体も念入りに洗浄。
バルブボディを起こして残留しているオイルをできるだけ抜き取ります。

細かな消耗品パーツはすべて交換。
ハウジング内の洗浄、見える範囲のみになりますが、こちらも念入りに実施します。
ストレーナの新、旧品の比較。グレーに見えるのはAT内部の汚れです。14000キロとはいえ、この状態です。ATFは定期的に交換したいところですね。

新品は気持ちがいいものですね!

鉄粉量はかなり少な目。

汚れを取り除けばこの通り!

オーバーフローパイプを組み付けてマグネットは元の位置へセット。
バルブボディ、ストレーナーを元に戻して、、、
オイルパンを組み付けます。
取付ボルトは新品に交換。
メルセデスベンツ専用のアタッチメントとトルコン太郎を接続します。
使用するオイルはペトロナスATF700。近年の多段式AT、高性能な車にぴったりのオイルです。

抜けた分のオイルを充填して圧送交換を始めます。

圧送交換の流れは一定量の交換後、自動的に10分間のクリーニングが始まります。
クリーニングが終わり、そしてまた圧送交換をします。これを繰り返しながら出来るだけ新油に近い状態になるように持っていきます。

どうでしょうか?ここまでキレイになれば申し分ありません!
続いてSOD1-Plusを添加。
ATF総油量の7%を注入。
そして油量調整。診断機で油温を計測しながら実施。
調整範囲になったらドレンプラグを取り外して、流れ出てくるオイルが糸状になれば完了です。
ドレンボルトガスケットを新品に交換して規定トルクで締め付けます。
これでATF交換作業は無事に完了。つづいてシフトタイミングのキャリブレーション(アダプション)を行います。冒頭でもお話ししましたが、わかりやすく言えば調整とか校正ということになります。
プライベートで実施しようと考えている方や業者様向けにお伝えさせていただきます。運転しながら断続的に行う作業ですので、必ずドライバーとは別に、診断機の操作をする人員が必要になります。危険が伴いますのでくれぐれも1人では行わないようにしてください。
それでは走行しながらアダプションを実施していきます。運転手はスタッフの松永くんでアダプションの操作は私(篠塚)が行います。
トルクとエンジン回転数を合わせながら、丁度良いタイミングでシフトアップ操作をするのですが、これが低いギアほど難しいんです…
2人で2時間ほどかけて作業は終了。せっかくATFの交換をしてリフレッシュを望んでいるのですから、最高の状態にしてからお客様に乗ってもらいたいと思うじゃないですか。僕としてはできる限りお客様の気持ちに寄り添いながら整備ができればと思っています。

一昔前は「ATFは無交換」と言われていた時期もあり、交換に対する抵抗があるかもしれません。

でもエンジンオイルは定期的に交換されますよね?

ATFも同じオイルですから、車を使用することで劣化もしていきますし、汚れた古いオイルのままだと性能が低下してトラブル発生の原因にもなるため、定期的に交換する必要があるんです。

早めのメンテナンスで愛車をいたわってあげましょう!
ご依頼ありがとうございました。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにもATF圧送交換作業の期間は、3日から1週間程度のお時間をいただいております。

どうぞご協力お願いいたします。

● 車の修理をしたいけど迷っている方
● どこのお店に依頼していいかわからない方
● 初めての問い合わせで迷っている方

経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。

参考データ・作業内容

メルセデスベンツAMG C63S (W205)
施工時走行距離: 14,000 キロ

<ATF圧送交換一式>

・バルブボディ脱着清掃
・ATオイルパンガスケット交換
・ATFストレーナー交換
・バルブボディ固定ボルト交換
・ATオイルパン固定ボルト交換
・オーバーフロープラグ交換
・オイルドレンプラグシールリング交換
・オイルガイドパイプ交換
・VGSカプラーOリング交換
・ATF (ペトロナス TUTELA ATF700) 20L
・SOD1-Plus添加
・シフトフィーリング改善のためのアダプション(キャリブレーション)

国産車に限らず輸入車でも対応可能な車種は多々ございます。メルセデスベンツ、BMW、ポルシェなど幅広く対応していますので遠慮なさらずにお問い合わせください。